2026/6/22 更新

「他の子に比べて筋力が弱い気がする」「首のすわりが遅い」「よく転ぶ」「階段が上れない」
こうした様子があると、保護者として心配になるのは当然です。
子どもの運動発達には個人差があり、少し遅めでも健康に育つことは少なくありません。一方で、神経や筋肉の病気、栄養状態、発達の特性などが背景にある場合もあります。
この記事では、筋力が弱いと感じるときに確認したいポイント、考えられる原因、受診の目安を保護者向けにわかりやすくまとめます。受診の判断に迷うときは、症状の強さだけでなく、いつから気になったのか、以前できていた動作が保てているかを見ることが大切です。
この記事でわかること
まずは、お子さんの今の状態を落ち着いて観察してみましょう。
1つの項目だけで判断せず、月齢・年齢、成長の流れ、日常生活で困っていることを合わせて見ることが大切です。
下の表は、一般的な運動発達の目安です。
個人差がありますが、複数の項目で遅れがある場合や、できていたことが急にできなくなった場合は受診を検討しましょう。
| 月齢・年齢のめやす | 運動発達のめやす |
|---|---|
| 生後2〜3か月 | 首がすわる |
| 生後4〜5か月 | 寝返りができる |
| 生後6〜9か月 | お座りができる |
| 生後9〜12か月 | つかまり立ちができる |
| 1歳〜1歳半 | 一人歩きができる |
| 2歳ごろ | 走る・跳ぶなどの動きが増える |
| 3歳ごろ | 三輪車や階段などの動きが上達する |
※目安はあくまで参考です。早産で生まれた場合は、修正月齢で発達を見ていくことがあります。
以下の項目に当てはまる場合は、かかりつけの小児科に相談することをおすすめします。
「大げさかな」と感じる場合でも、心配な変化をメモして健診や診察で伝えることが早期発見につながります。
子どもの筋力が弱く見える理由は、発達の個人差だけでなく、体を動かす神経・筋肉・感覚、栄養や生活環境など、いくつかの視点から考えます。
痛みがあるのか、疲れやすいのか、左右差があるのかによっても考える原因は変わります。
首すわりや歩き始めの時期には個人差があります。
体格が大きい赤ちゃんや早産で生まれたお子さんでは、発達を少し長い目で見ることもあります。
体を動かすには、脳や脊髄からの命令が筋肉に伝わる必要があります。
この経路や筋肉そのものに異常があると、力が入りにくい、動きがぎこちない、疲れやすいといった症状が出ることがあります。
筋力自体は大きく低下していなくても、バランスをとる、力を調整する、複数の動きを組み合わせることが苦手で「筋力が弱い」ように見えることがあります。
ビタミンD不足によるくる病など、栄養状態が筋力や骨の発達に影響することがあります。
また、体を動かす機会が少ない環境も運動発達に関係します。

子供の筋力が弱い場合、具体的にはどういった病気が考えられるでしょうか?
病名を明らかにするには医師に受診する必要がありますが、どういった病気があるのか気になりますよね。ここでは病名とともに、その特徴を解説していきます。
発達性協調運動症(DCD)は、筋力そのものは正常であっても、複数の筋肉や体の部位を同時に使う「協調運動」に困難を抱える発達障害のひとつです。
なぜ筋力が弱く見えるのか:
筋力の問題ではなく、脳から筋肉への運動制御の問題により、不器用さ・ぎこちない動きとして現れます。
「力が弱い」というよりも、「うまく力を使えない」状態です。
特徴的な症状:
家庭で気づくポイント:
「他の子と比べて明らかに不器用」「運動だけが極端に苦手」「体の動きがぎこちないが、知的発達は問題ない」といった場合に疑われます。
受診の目安:
小学校入学前後に運動や細かい作業の困難さが目立ってきたら、発達外来や小児科に相談しましょう。理学療法・作業療法によるリハビリテーションが有効です。
ビタミンD欠乏症は、骨の成長に必要なビタミンDが不足する状態です。
重症化すると「くる病」と呼ばれ、骨が柔らかくなって変形したり、筋力が低下したりします。
なぜ筋力が弱くなるのか:
ビタミンDは骨だけでなく筋肉の機能にも関わっています。
ビタミンDが不足すると筋力が低下し、運動能力の発達が遅れることがあります。
特徴的な症状:
家庭で気づくポイント:
「日光にほとんど当たらない生活」「母乳のみで育てている」「食事のビタミンD摂取が少ない」といった場合にリスクが高まります。
受診の目安:
歩き方のおかしさや骨の変形が気になる場合、または上記のリスクがある場合は小児科を受診してください。血液検査でビタミンDの値を確認できます。治療はビタミンD補充が中心で、早期に対応することで改善が期待できます。
脳性まひは、出生前後の脳の損傷や発育異常によって、運動や姿勢のコントロールがうまくできなくなる状態の総称です。
病気の種類ではなく「症候群」として分類されます。
なぜ筋力が弱くなるのか:
脳の運動を司る部位が損傷されることで、筋肉へ正常な指令が届かず、筋力低下・筋緊張の異常・動きのコントロール困難が生じます。
特徴的な症状:
家庭で気づくポイント:
「一方の手足しか使わない」「手足に力がなくだらんとしている」「全身の筋緊張が異常に高いまたは低い」といった場合に疑われます。
受診の目安:
乳児期の発達の遅れや筋緊張の異常が気になる場合は、早めに小児科・小児神経科を受診してください。
早期のリハビリテーションが重要です。脳性まひには根本的な治療法はありませんが、症状に合わせた継続的なリハビリで生活の質を高めることができます。
筋ジストロフィーは、筋肉の機能に必要なたんぱく質を作る遺伝子の異常によって、筋肉が徐々に壊れていく遺伝性の筋疾患の総称です。さまざまな種類があり、それぞれ発症時期・症状の重さ・進行速度が異なります。
なぜ筋力が弱くなるのか:
筋肉の細胞を維持するたんぱく質(ジストロフィンなど)が正常に作られないため、筋肉の細胞が破壊され、徐々に筋力が低下します。
特徴的な症状(デュシェンヌ型の場合):
家庭で気づくポイント:
「他の子に比べて明らかに筋力が弱い」「床から立ち上がる動作が特徴的(手で膝を押さえながらよじ登る)」「ふくらはぎが太い」といった場合に疑われます。男児に多い(デュシェンヌ型)ですが、女児にも発症する型があります。
受診の目安:
上記のような症状が気になる場合は、小児科・小児神経科を受診してください。血液検査(クレアチンキナーゼ値の上昇)・遺伝子検査・筋生検などで診断します。現在は新しい治療法が研究・承認されてきており、早期診断・早期介入が重要です。
先天性ミオパチーは、筋肉の構造が生まれつき異常なために、筋力の弱さや筋緊張低下がみられる疾患群です。
遺伝子の変異が関与し、いくつかの種類(セントラルコア病・ネマリンミオパチーなど)があります。
なぜ筋力が弱くなるのか:
筋肉を作るたんぱく質の構造異常により、筋肉が正常に機能できず、全身の筋力低下が生じます。
特徴的な症状:
家庭で気づくポイント:
「赤ちゃん期から全身がだらんとしている」「泣き声が弱い」「ミルクを飲む力が弱い」といった場合に疑われます。
症状の進行はゆっくりなものが多く、成人まで歩ける場合も多いです。
受診の目安:
乳児期に筋緊張の明らかな低下があれば、早めに小児科・小児神経科を受診してください。
筋電図・筋生検・遺伝子検査などが診断に用いられます。各症状に対する対症療法とリハビリテーションが中心となります。
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄にある運動神経細胞が徐々に失われることで、全身の筋力が低下・筋肉が萎縮していく遺伝性の神経筋疾患です。
なぜ筋力が弱くなるのか:
SMN1という遺伝子の異常により、運動神経の働きに必要なSMNタンパク質が不足し、脊髄の運動神経細胞が死滅していきます。
筋肉自体への命令が届かなくなるため、筋力が低下します。
重症度による分類:
家庭で気づくポイント:
「泣き声が小さい」「抱っこするとだらんとしている」「頭を持ち上げられない」「手足の動きが少ない」といった場合にⅠ型が疑われます。
受診の目安:
SMAは早期治療が非常に重要です。近年、ヌシネルセン・ゾルゲンスマ・リスジプラムなど複数の治療薬が承認されており、症状が出る前から治療を開始するほど効果が高いとされています。
症状が疑われる場合は、すぐに小児神経科を受診してください。
染色体の数や構造の異常が原因で生じる疾患群です。
ダウン症候群(21トリソミー)をはじめ、さまざまな染色体異常が筋緊張低下の原因になることがあります。
なぜ筋力が弱くなるのか:
染色体の異常により脳・神経・筋肉の発達が影響を受け、全体的な筋緊張の低下と運動発達の遅れが生じます。
特徴的な症状:
受診の目安:
出産直後の健康診断・新生児スクリーニング・乳幼児健診で多くの場合は早期に発見されます。
発達の遅れや低筋緊張が気になる場合は、遺伝子・染色体検査を含む精密検査を行う小児科・小児神経科を受診してください。

受診するか迷ったときは、「成長が続いているか」「日常生活で困っているか」「急な変化があるか」を確認しましょう。
診察では、いつから気になったか、できる動作・難しい動作、転倒の頻度、食事や睡眠の様子を伝えると相談しやすくなります。
様子を見て良いケース
早めに小児科を受診すべきケース
まずは、かかりつけの小児科に相談するのが基本です。
必要に応じて、専門の診療科やリハビリテーションにつないでもらえます。
| 診療科・機関 | こんな場合に |
|---|---|
| 小児科 | 最初に相談する窓口。発達の全体像を確認します。 |
| 小児神経科 | 神経・筋肉の病気が疑われる場合。 |
| 小児整形外科 | 骨や関節、歩き方・姿勢が気になる場合。 |
| リハビリテーション科 | 運動発達や日常動作の支援が必要な場合。 |
| 発達外来・発達支援センター | 発達性協調運動症などが疑われる場合。 |
リハビリテーションは、診断名がはっきりしている場合だけでなく、運動発達を促したい場合にも役立つことがあります。
自己判断で強い運動をさせるのではなく、医師や専門職に相談しながら進めましょう。
A. 筋ジストロフィー、SMA、先天性ミオパチーの一部は遺伝が関係します。
ただし、原因は病気によって異なります。家族歴が気になる場合は、医師や遺伝カウンセラーに相談してください。
A. 受診して問題ありません。
転びやすさや歩き方の違和感は、骨・関節・神経・筋肉の状態を確認するきっかけになります。
A. 床で体を動かす、遊びの中で姿勢を変えるなど、日常の中で無理なく体を使う機会を作ることは助けになります。
ただし、病気が疑われる場合は自己判断での訓練は避け、医師に相談してください。
子どもの筋力が弱い原因は、発達の個人差から神経・筋肉の病気まで幅広くあります。
できていたことが急にできなくなった、手足の力が明らかに弱い、飲む力が弱い場合は早めに受診しましょう。
まずは小児科に相談し、必要に応じて小児神経科、整形外科、リハビリテーション科へつないでもらいましょう。
SMAなど早期治療が重要な病気もあるため、保護者の「いつもと違う」という気づきは大切なサインです。
子どもの筋力や運動発達について不安があるときは、一人で抱え込まないことが大切です。
気になる様子をメモし、健診や小児科で相談しながら、お子さんに合ったサポートを見つけていきましょう。
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