2026/2/5 公開
国立研究開発法人 国立成育医療研究センターの永井先生に
「子どもの言葉が出ない」を中心にお話を聞いていきたいと思います。
後編では、家庭でできる観察ポイント、受診の目安や相談先、親御さんへのメッセージを紹介します。

永井 章(ながい あきら)先生
国立成育医療研究センター総合診療部 診療部長
小児科医
1989年 大阪医科大学 医学部卒業
専門分野
資格
1歳過ぎて模倣がない、1歳3ヶ月以降で指差しがない場合は注意が必要で、
なぜならば前述のようにこれらのステップは言葉が出るための必須条件だからです。
また、視線が合うか、親と一緒に遊んで喜ぶかなど、コミュニケーションへの意欲や関心も重要なチェックポイントです。
言葉はコミュニケーションの一部なので、親との関わりを持とうとする気持ちや対人への関心があるかどうかが大切で、
これらの社会性が育っていないと言葉がわかっても出ないことがあります。
言葉の理解に関して、親は「わかっている」と答えることが多いですが、実際には言葉ではなく動作(ジェスチャー)で理解している場合があります。
例えば「おいで」と言いながら手振りをしていると、子どもは言葉ではなく動作で理解していることがあります。
これは親御さんが無意識に行っていることが多く、気づきにくいポイントです。
言葉自体が理解できているかどうかの見極めが重要で、動作なしでも言葉だけで理解できているかを確認する必要があります。
また、言葉が出ることにだけに注目しがちですが、言葉の本質はコミュニケーションツールの一つであるため、対人関係への意欲や関心、親と関わろうとする気持ちが育っているかどうかも重要なポイントとなります。
そうした視点から、視線が合うか、一緒に遊んで喜ぶか、親との関わりに関心があるかといった社会性の発達も言葉の発達には不可欠な要素となります。
①共同注意・②模倣・③指差しの他に、視線の合わせ方や親とのかかわり方は重要になります。
視線の合わせ方は、親や周囲の人と視線を合わせることができるか、コミュニケーションへの興味や意欲を示すための重要な指標になります。
親との関わり方は、親の呼びかけに反応があるか、一緒に遊ぶことを楽しめるか、親に対する関心や興味があるかなどが重要になってきます。
言葉以外のコミュニケーション能力は、子ども供の言語発達と密接に関連しています。
これらの要素は単なる発達の指標ではなく、子ども供の成長を理解する上で重要な手がかりとなります。
指差し、視線、ジェスチャーなどの非言語的なコミュニケーション能力は、言語発達の基盤となります。
これらの能力が著しく欠如している場合は、専門家に相談することをおすすめします。
以下のような状況が1歳半頃まで継続する場合は、早めに専門家に相談することが望ましいです。

家庭でできる発達の観察ポイント
家庭で意識して見ておきたい観察のポイントを紹介します。
・名前を呼んだときに振り向く、視線を向ける
・「おいで」「ちょうだい」「置いて」など、簡単な指示を理解し、行動に移せる
・手を振って「バイバイ」と言うと、同じように手を振ろうとする
・周囲の物音や声に気づく様子がある
・犬の鳴き声、チャイム音など、特徴的な音に反応する
発達の記録方法
観察した内容は、できるだけ記録しておくことで、後から振り返りや専門家への相談に役立ちます。
・運動発達:首が座る、お座り、はいはい、歩き始めた時期
・言葉:最初に出た言葉、語彙が増えたタイミング
正確な日付でなくても、「○か月頃」「春頃」など大まかな記録で問題ありません。
・歩き方や動き方など、運動面の様子は動画が参考になりやすい
・言葉の発達については、診察や問診で確認できるため、必須ではない
「気になることがあるとき」に、無理のない範囲で残しておくと役立ちます。
言葉はコミュニケーションなので、子どもの興味や行動に合わせて言葉を添えることが大切です。
例えば、子どもが指さしたものに「車だね」と言葉をつける、子どもの行動を「水出たね」と実況中継するように言葉にする、子どもが発した言葉に応答するなどです。
子どもは興味のあることしか覚えないので、本人が関心を持っていることに言葉をつけていくことが効果的です。
言葉を伸ばすためには、子どもが「うー」と言ったら「鬼だね」と言葉を繋いであげる、子どもが何かに驚いた時に「びっくりしたよね」と気持ちを言葉にしてあげる、食事中に「これパンだよね」と物の名前を教えてあげるなど、子どもの発する音や行動に対して親が適切に言葉で応えることが重要です。
「言ったら答えてくれる」という繰り返しの学習が一番大事になります。
絵本の読み聞かせも有効ですが、基本は親子の関わりを通じたコミュニケーションなのです。
保育園などの集団生活も言葉の発達に効果的で、
年上の子どもたちが本人の行動や発しようとしている言葉をうまく理解して対応してくれる中で、本人の言葉を引き出してくれる環境ができやすくなります。
1歳で模倣がない、1歳半近くになっても指差しがない場合は相談した方が良いでしょう。
また、1歳半健診で言葉が出ていない場合は、検診でフォローアップの対象になることが多いです。1歳半は人間らしくなるスタートの重要なチェックポイントであり、統計的に9割以上の子どもが言葉を話し始める時期です。
2歳半頃には二語文(「ワンワンいた」「パパいる」など)が出ることが期待されますが、この時期は法的健診がないため見逃されがちです。
ただし、育児相談の本質は親の不安解消にあるので、心配であれば相談することをお勧めします。
言葉の発達には個人差がありますが、言葉の理解(「おいで」「ちょうだい」などの指示がわかる)があり、伝えようとする意欲があれば、多くの場合は問題ありません。
極端に言うと、2歳で一言も話さない場合や3歳で二語文が出ない場合は明らかに医療機関や療育への相談が必要です。

まずはかかりつけの小児科医に相談するのが良いでしょう。
かかりつけの先生は普通の言葉の遅れについて見立てをしてくださるため、最初の相談先として適しています。
また、地域の保健センターなどにある言葉や発達に関する相談窓口も利用できます。
区や市によって名称は異なりますが、保健センターを中心とした相談窓口では、乳幼児相談を通じて専門的な評価を受けることができ、
必要に応じて耳鼻科の診察や発達検査なども行われます。
自閉症スペクトラム症が疑われる場合は、診断を受けた上で療育につながることが重要です。
診断に関しては、専門医療機関で行われるか、保健センターなどでの相談窓口からの専門相談などで行われるなどのケースがあります。
その後、地域の療育サービスに繋がることになります。
どちらの相談先を選んでも適切な対応が期待できるため、親御さんが相談しやすい方を選択することが大切です。
これまでの発達の経過(お座りができた時期、つかまり立ちをした時期、言葉の発達段階など)をメモしておくと良いでしょう。
言葉の発達に関しては、共同注意(一緒に物を見るようになった時期)、模倣が出始めた時期、指差しが出た時期、初語が出た時期などの具体的な発達段階を記録しておくことが重要です。
また、出生時の体重や出産時の情報、家庭環境(兄弟の有無など)についても伝えると参考になります。兄弟がいる場合は、上の子とのコミュニケーションの様子なども診察の参考になります。
特に重要なのは発達歴で、言葉だけでなく運動発達も含めた全体のバランスを医師が把握することで、より適切な評価と助言を受けることができます。
不安を感じる部分があれば、遠慮なく地域のかかりつけの先生や保健センターなどに相談することをお勧めします。
相談することだけでも不安が軽減される可能性高いと思います。
わからないから不安になってしまうのは当然のことですが、こうした相談を契機にある程度どうすればいいかという関わり方や起きている状況が理解できるようになると、
より安心感を持って言葉だけでなく育児全体に取り組めるようになると思います。
くり返しにはなりますが、言葉の発達はコミュニケーションツールの一つであり、
細かいことを心配しすぎるよりも、まずは親子の関わりを大切にし、心配なことがあれば専門家に相談するという姿勢が最も重要です。
前編では、永井先生のご経歴や紹介、言葉が出ないに関する基本情報などを紹介しています。
詳細は下記からご覧ください。
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