2025/12/26 公開

国立研究開発法人 国立成育医療研究センターの島袋先生に
「赤ちゃんの便の色がおかしい」を中心にお話を聞いていきたいと思います。

前編では、鈴木先生のご経歴や紹介、赤ちゃんが便の色に関する基本情報、家庭での観察などを紹介します。

鈴木光幸（すずき　みつよし）先生

順天堂大学医学部附属順天堂医院　小児科・思春期科

小児科医、准教授

2000年　順天堂大学 医学部卒業

2006年　順天堂大学大学院　医学研究科卒業

2017~2020年　スウェーデン・ルンド大学幹細胞研究所

専門分野

• 小児肝疾患
• 小児膵疾患
• 生活習慣病
• 骨代謝性疾患　など 

資格

• 日本専門医機構認定小児科専門医
• 日本周産期・新生児医学会　周産期（新生児）専門医
• 日本小児栄養消化器肝臓学会認定医

• 鈴木先生のご専門とご経歴
• 「赤ちゃんの便の色」に関する基本情報
• 赤ちゃんの便の変化と家庭での観察
• 便の色以外の日常の観察
• 受診の目安と医療機関での相談
• 親御さんへのメッセージ

小児の消化器疾患や肝臓の病気、代謝に関わる病気を中心に診療しています。
小児科医としての幅広い経験に加え、新生児期から成人までを見据えた肝臓診療にも携わってきました。

もともと特定の分野に絞って医師を目指したわけではありませんが、大学病院で肝臓や膵臓、消化器の分野を担当する中で、自然とこの領域を専門とするようになりました。
小児科医は、かぜや感染症、アレルギーなど日常的な病気から専門的な疾患まで幅広く診る「子どもの総合医」です。

お子さん一人ひとりの成長やご家族の思いに寄り添いながら、安心して相談していただける医療を心がけています。

赤ちゃんの便が白っぽい場合に、まず考えられる病気の一つが「胆道閉鎖症」です。
これは約1万人に1人の割合で発症する比較的まれな病気ですが、早い時期に手術が必要となる重要な疾患です。
胆道閉鎖症では、胆汁が腸へ流れなくなり、肝臓からの出口がふさがってしまいます。
そのため、治療が遅れると胆汁が肝臓にたまり、肝硬変へ進行することがあります。

そのため、生後1か月頃の健診では「便の色カード」を用いたスクリーニングが行われます。
このカードは母子手帳に挟まれており、赤ちゃんの便の色を見比べることができます。
便が白っぽく、カードの1～3番に近い場合には、胆道閉鎖症を含む肝臓の病気が疑われます。
胆道閉鎖症は、生後1か月を過ぎると手術の効果が低下することが知られており、早期発見がとても重要です。
なお、便が白くなる病気は胆道閉鎖症以外にもあり、その頻度はおよそ2,000人に1人とされています。
そのため、気になる便の色がみられた場合には、小児科医や小児外科医による専門的な診断を受けることが大切です。

▼「便の色カード」を参考に確認してみましょう。

赤ちゃんの便の色や形は、成長の過程で大きく変化します。
そのため、初めて見ると「これで大丈夫なのかな」と不安に感じる方も少なくありません。

便の色については、便色カードの4番から7番が、基本的に正常と考えられています。
特に4～6番の色は、多くの赤ちゃんにみられる一般的な便の色です。
7番のような緑色の便もよく見られますが、ほとんどの場合、心配はいりません。

便の形については、母乳で育っている赤ちゃんの場合、大人の目には少し下痢のように見えることがあります。
オムツにしみやすく、水っぽく感じられる便でも、元気に過ごしていれば心配はいりません。大切なのは赤ちゃんが元気で、機嫌よく過ごしているかどうかです。

便の回数や量には個人差が大きいため、回数や量だけで判断する必要はありません。
赤ちゃん全体の様子を見ながら、成長を見守っていくことが大切です。初めての育児では、赤ちゃんの便ひとつでも不安になるものです。
しかし、多くの場合は自然な変化の範囲内です。

気になることがあれば、一人で悩まず、どうぞ気軽に小児科医にご相談ください。

生まれて最初に出る便は、「胎便」と呼ばれる黒くて粘り気のある便です。
これは、赤ちゃんがお腹の中で羊水を飲み込んだことによるもので、赤ちゃんが体の中で作った最初の便になります。
胎便には、胎児期の腸管からはがれ落ちたものや、羊水の成分が含まれています。

その後、母乳やミルクを飲むようになると、便は次第に軟らかくなり、色も4～7番程度へと変わっていきます。
この時期の便は、大人から見るとお腹が緩いように感じられるかもしれませんが、赤ちゃんにとっては正常な状態です。
オムツにしみ出さない程度の軟便であれば、心配する必要はありません。

生後2～６か月頃には、便の中につぶつぶしたものが混ざることがありますが、これもよくみられる正常な変化です。
生後6か月頃から離乳食が始まると、便のにおいや形にも変化が出てきます。
乳酸菌による酸っぱいにおいから、次第に大腸菌が関与する大人の便に近いにおいへと変わっていきます。

1歳前後には大人に近い便の状態になりますが、母乳やミルクを続けて飲んでいる場合には、軟らかい便が続くこともあります。

赤ちゃんの便は、栄養のとり方が変わることで大きく変化します。
母乳やミルク、そして離乳食へと進むにつれて、便の色や性状も少しずつ変わっていきます。
離乳食を始めると、それまで水っぽかった便が次第にまとまり、少し固く感じられることがあります。
そのため、場合によっては便秘気味になることもあります。
目安として丸2日以上排便がない場合には、お腹のマッサージや肛門刺激をしたり、小児科受診をお勧めします。

また、お薬の影響で便の様子が変わることもあります。
たとえば、鉄剤のシロップを服用すると便が黒っぽくなることがありますし、抗菌薬を飲むことで腸内環境が変化し、便がやわらかくなることもあります。

先ほどもお伝えしましたが、赤ちゃんが元気で機嫌よく過ごしている場合には、便のちょっとした変化を過度に心配する必要はありません。
ただし、白っぽい便や血が混じる便、長く続く便秘がみられる場合には、注意が必要です。
赤ちゃんの便は、栄養の内容や体調、服用しているお薬など、さまざまな影響を受けて変化するものです。
そのことを知っておくだけでも、日々の育児の安心につながります。

赤ちゃんの便の色は、親御さんが特に気になりやすいポイントの一つです。
ここでは、心配になりやすい便の色についてお話しします。
まず、最も注意が必要なのは白っぽい便です。
便色カードで1～3番にあたる色が続く場合には、胆道閉鎖症などの病気の可能性を考える必要があります。
早めに医療機関へご相談ください。

一方で、緑色の便は意外と多くの親御さんが心配されますが、ほとんどの場合は問題ありません。
便色カードの7番は胆汁の色素によるもので、基本的には正常な範囲です。

黒っぽい便については、鉄剤の服用が原因であることがよくあります。
低出生体重のお子さんや、貧血傾向のお子さんに処方される鉄剤のシロップを飲んでいる場合、便が黒くなることがありますが、通常は問題ありません。

赤色の便の場合、リンパ濾胞増殖症（いわゆる母乳性血便）による、少量の血が混じることがあります。
赤ちゃんが元気で機嫌よく過ごしていれば、過度に心配する必要はありません。

大切なのは、便の色だけを見るのではなく、赤ちゃんの全体的な様子をあわせて確認することです。
機嫌がよく、元気に過ごしている場合には、便の色の小さな変化を必要以上に心配する必要はありません。

• 便の匂い：母乳栄養児は酢酸臭や乳酸菌による酸っぱい臭い
• 便の回数
• 食欲：ミルクを飲むか、ごはんを食べるか
• 機嫌：いつもと比べて動きが少なくなるなど

が大切です。

赤ちゃんは体調がすぐれなくなると、ミルクや食事をあまりとらなくなることがあります。
これは、親御さんが気づきやすい大切なサインの一つです。

また、普段は元気に遊んでいる赤ちゃんが、急に静かになったり、あまり動かなくなったりした場合には、体調の変化に注意が必要です。
母乳で育っている赤ちゃんの便には、酢酸のようなにおいがすることがありますが、成長して離乳食が進むにつれて、大人に近いにおいへと変わっていきます。

体温も、とても重要な観察ポイントです。
発熱は多くの病気の初期にみられる症状の一つですので、日頃から体温を確認しておくことをおすすめします。

このような日々の変化を記録しておくと、小児科医に相談する際に役立つ情報になります。
特に受診の際には、症状がいつ頃から始まったのか、どのように変化してきたのかといった点が診断の助けになります。
毎日のちょっとした観察の積み重ねが大切です。

後編では、便の色以外の日常の観察、受診の目安と医療機関での相談、先生からのメッセージを紹介します。

詳細は下記からご覧ください。

〒113-0033 東京都文京区本郷３丁目１−３
順天堂大学医学部附属順天堂医院

小児科・思春期科　医師 准教授
鈴木 光幸 先生

インタビュー・作成
一般財団法人 日本患者支援財団 運営事務局