筋ジストロフィー

2026/9/11 更新

筋ジストロフィーとは?

脊髄性筋萎縮症とは

筋ジストロフィーとは、筋肉を保つタンパク質の異常により、筋肉が壊れやすく少しずつ筋力が低下する遺伝性の筋疾患の総称です。


「筋力が弱い」原因には発達の個人差や体調不良もありますが、筋ジストロフィーでは筋肉そのものが傷つきやすく、時間とともに症状が進むことがあります。


病型は複数あります。
本記事では、子どもで重要なデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)と、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を中心に説明します。


日本では筋ジストロフィーは指定難病113で、小児慢性特定疾病の対象です。
医療費の助成は年齢、症状、重症度、自治体の判断などで異なります。



DMD(デュシェンヌ型)とBMD(ベッカー型)の違い

DMDとBMDはいずれもジストロフィン遺伝子の変化が原因ですが、ジストロフィンの量や働きが異なるため、発症時期や進行に違いがあります。

DMDではジストロフィンがほとんど作られず、幼児期から筋力低下が目立ちます。BMDでは一部働くジストロフィンがあり、進行がゆっくりな傾向があります。

ただし個人差があります。

項目DMDBMD
正式名デュシェンヌ型筋ジストロフィーベッカー型筋ジストロフィー
発症時期幼児期に気づかれることが多い小児期から成人期まで幅がある
進行比較的早く進むことが多い比較的ゆっくり進むことが多い
ジストロフィンほとんど作られないことが多い量が少ない、または働きが弱いことが多い
注意点歩行、心臓、呼吸を継続評価心筋症が目立つ場合もあり定期評価が必要


原因・遺伝について

DMDとBMDの主な原因は、X染色体上にあるジストロフィン遺伝子の変化です。

ジストロフィンは筋線維を守るタンパク質で、不足すると筋肉が傷つきやすくなります。


遺伝形式はX連鎖性です。

男児に多いのは、男児がX染色体を1本だけ持つため、遺伝子変化の影響が出やすいからです。


母親が保因者である場合もありますが、家族歴がなく新しく起こった遺伝子変化で発症することもあります。原因を保護者の責任として考える必要はありません。

きょうだいへの影響や将来の妊娠が不安な場合は、遺伝診療科や遺伝カウンセリングで相談できます。女性の保因者でも心臓の評価が必要になる場合があります。


子どもの筋ジストロフィーの主な症状と合併症

筋ジストロフィーは、転びやすさや階段の苦手さから気づかれることがあります。

進行に伴い、心臓、呼吸、骨、栄養も継続して確認します。

分類主な症状・合併症家庭で気づくポイント
幼児期歩き始めが遅い、走るのが苦手、転びやすい床から立つときに手を使う、ふくらはぎが太く見える
学童期以降階段がつらい、疲れやすい、歩行能力の低下移動や体育の後に強い疲れが出る
骨格・関節関節拘縮、脊柱変形、骨粗しょう症・骨折足首が硬い、姿勢が傾く、痛みを訴える
心臓・呼吸心筋症、不整脈、呼吸機能低下、睡眠中の呼吸障害症状が乏しいこともあり、定期検査が重要

症状がなくても、心臓や呼吸機能の検査が行われることがあります。

早く変化を見つけることで、治療や生活調整につなげやすくなります。


診断方法

診断では、症状、家族歴、身体診察、血液検査、遺伝学的検査を組み合わせます。現在は遺伝学的検査が重要な位置づけです。


血液検査ではCK(クレアチンキナーゼ)を確認します。CKは筋肉が傷ついたときに高くなり、DMDやBMDでは高値になることが多い検査です。


遺伝学的検査ではジストロフィン遺伝子の欠失、重複、点変異などを調べます。必要に応じて筋電図、筋生検、心臓検査、呼吸機能検査を行います。すべての検査を必ず行うわけではありません。


治療方法

治療は、進行を遅らせ、合併症を早く見つけ、生活の質を保つことを目的に行います。

薬、リハビリ、心臓・呼吸管理を組み合わせます。


DMDではステロイド治療が使われることがあり、歩行期間の延長や呼吸機能維持が期待されます。

副作用もあるため、開始時期や量は主治医と相談します。


リハビリでは、ストレッチ、関節拘縮予防、姿勢や歩行の支援、呼吸理学療法などを行います。

高負荷の筋力トレーニングや強い衝撃は、筋肉を傷める可能性があるため注意します。


条件付きですが保険収載されている新しい治療として、ビルトラルセン(ビルテプソ®)デランジストロゲン モキセパルボベク(エレビジス®)があります。

ビルテプソ®は核酸医薬品で、エクソン53スキッピングにより治療可能なDMDが対象です。

エレビジス®は遺伝子治療薬で、年齢、歩行、遺伝子変化、抗体などの条件があります。


ギビノスタットは経口のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬で、海外の臨床試験成績を主要な根拠として2026年内の製造販売承認申請、2027年内の承認取得および販売開始を目指して開発が進められています。


日常生活・学校生活で気を付けること

日常生活では、運動をすべて避けるのではなく、本人の状態に合う活動を安全に続けることが大切です。

過度な疲労や転倒を避け、主治医やリハビリ専門職と相談します。


学校では、体育の参加方法、階段や校内移動、休憩、トイレ、机や椅子、登下校の負担を相談しましょう。

車いす、装具、福祉用具は、できることを保つための選択肢です。


災害時は、薬、人工呼吸器や電源、装具、医療機関情報、避難先で必要な配慮をまとめておくと安心です。

感染症流行時は、呼吸状態の変化に早めに気づけるようにします。


病気の基本情報だけでなく生活や支援情報を知りたい方は、かんしん広場の「筋ジストロフィー広場」もご覧ください。


筋ジストロフィー広場はこちら


利用できる医療・福祉制度

脊髄性筋萎縮症びの治療法

筋ジストロフィーでは、医療費や生活を支える制度を利用できる場合があります。


病名だけで自動的に対象になるのではなく、年齢、症状、障害の程度、自治体の判断で異なります。

制度概要
指定難病医療費助成制度基準を満たす場合、医療費負担を軽減できます。
小児慢性特定疾病医療費助成制度18歳未満を中心に、治療が必要な子どもの医療費を助成します。
身体障害者手帳歩行や聴覚などに障害がある場合、対象となることがあります。
特別児童扶養手当日常生活に一定の支援が必要な子どもがいる家庭を支えます。
障害児福祉サービス・自治体支援補装具、移動支援、相談支援、学校生活の支援などがあります。

※制度名をタップするとかんしん広場(外部サイト)へ遷移します


将来・成人後について

脊髄性筋萎縮症の検査方法

筋ジストロフィーの将来は、病型、遺伝子変化、合併症、治療や支援の状況で異なります。

寿命を単一の年齢で断定することはできません。


医療の進歩により、心臓・呼吸管理、リハビリ、福祉用具、在宅支援を組み合わせながら、進学、
労、自立生活を目指す方もいます。


小児科から成人診療科へ移る時期には、治療歴、検査結果、使用薬、福祉制度を整理しておくと、
成人後の医療につながりやすくなります。


受診先・相談先

子どもの転びやすさ、筋力低下、階段の苦手さが気になるときは、まず小児科に相談しましょう。


必要に応じて小児神経科や専門施設へ紹介されます。


診断後は、小児神経科・神経内科、循環器科、呼吸器科、整形外科、リハビリテーション科、歯科、遺伝診療科などが連携します。


よくある質問(FAQ)

Q. 筋ジストロフィーとはどんな病気ですか?

A. 筋ジストロフィーは、筋肉の構造や働きを保つタンパク質の異常により、筋肉が傷つきやすくなり、少しずつ筋力が低下していく遺伝性の筋疾患です。複数の病型があり、発症時期や進行の速さ、症状の出方は病型によって異なります。

子どもで特に重要なのが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)です。

早期に診断し、リハビリや心臓・呼吸の管理につなげることが大切です。


Q. DMDとBMDの違いは何ですか?

A. DMDとBMDはいずれも、筋肉を保つために重要な「ジストロフィン」というタンパク質に関わる遺伝子の変化が原因です。

DMDは幼児期から歩きにくさや転びやすさが目立ち、比較的早く進行することが多い病型です。

一方、BMDはDMDに比べて発症が遅く、進行もゆるやかな傾向があります。

ただし、症状の重さや進行の速さには個人差があるため、病型だけで将来を一律に判断することはできません。


Q. 筋ジストロフィーは遺伝しますか?

A. DMD/BMDは、X染色体上にあるジストロフィン遺伝子の変化によって起こるため、X連鎖性遺伝という形式をとります。

母親が保因者である場合もありますが、家族に同じ病気の方がいなくても、新しく起こった遺伝子変化によって発症することがあります。


「必ず母親から遺伝する」というわけではありません。

きょうだいへの影響や将来の妊娠について不安がある場合は、遺伝診療科や遺伝カウンセリングで相談できます。


Q. 治療や新しい薬はありますか?

A. 筋ジストロフィーを完全に治す治療はまだ限られていますが、進行をできるだけゆるやかにし、生活の質を保つための治療や管理があります。

DMDではステロイド治療、リハビリテーション、ストレッチ、心臓・呼吸機能の定期的な管理が重要です。

また、遺伝子変化の種類など条件に合う場合、エクソンスキッピング薬や遺伝子治療が選択肢になることがあります。

治療の対象や開始時期は一人ひとり異なるため、専門医と相談して判断します。


Q. 運動や学校生活はできますか?

A. 筋ジストロフィーがあっても、本人の状態に合わせて運動や学校生活を続けることは可能です。

大切なのは、無理に周囲と同じ活動を続けることでも、必要以上に制限することでもありません。

強い負荷や転倒リスクの高い運動は避ける場合がありますが、主治医やリハビリ専門職と相談しながら、できる活動を安全に続けることが大切です。

学校では、体育の参加方法、階段や移動、休憩時間、机や椅子、装具や車いすの使用などについて、早めに情報共有しておくと安心です。


難病の子どもとスポーツの話 を詳しく知りたい方はこちら

学校生活について詳しく知りたい方はこちら


まとめ

筋ジストロフィーは、筋肉が壊れやすく再生されにくい遺伝性の筋疾患です。

DMDとBMDはいずれもジストロフィン遺伝子が関係しますが、発症時期や進行の速さ、症状の出方には違いがあります。


症状は、転びやすさや階段の苦手さだけではありません。

心臓、呼吸、関節、脊柱、骨、栄養の管理も重要で、症状が目立たない時期から定期的な検査が必要になることがあります。


治療は、薬物療法、リハビリ、呼吸・心臓管理、学校生活や生活環境の調整を組み合わせて行います。

診断直後は不安が大きいかもしれませんが、専門医、学校、福祉制度とつながることで、子どもの生活を支える選択肢は広がります。


筋ジストロフィーは子どもの時期だけでなく、成人後も継続的な医療や生活支援が大切になる病気です。


大人になると、進学、就労、自立生活、心臓・呼吸管理の継続、福祉制度の利用など、子どもの時期とは異なる悩みが出てくることもあります。

成人後の筋ジストロフィーや、患者さん・ご家族向けの生活・支援情報について知りたい方は、かんしん広場の「筋ジストロフィー広場」もご覧ください。


監修医:国立研究開発法人 国立成育医療センター 総合診療部 統括部長 窪田満 先生


かんしん広場でも「筋ジストロフィー」の情報を発信

その他コンテンツ

各自治体の難病指定医

外部サイト(難病情報センター)へ移動します

インタビュー