2026/10/13 更新

胆道閉鎖症とは、肝臓で作られた胆汁が腸へ流れにくくなる、乳児期の肝臓・胆道の病気です。胆汁が流れない状態が続くと、黄疸や白っぽい便がみられ、肝臓に負担がかかります。
胆道とは、肝臓で作られた胆汁を十二指腸へ運ぶ通り道です。胆汁は脂肪の消化や脂溶性ビタミンの吸収に関わります。胆道閉鎖症では、肝臓の外にある胆管が何らかの原因でふさがり、胆汁が腸へ届きにくくなります。この状態を胆汁うっ滞といい、胆汁がうまく流れず肝臓側にたまりやすい状態を指します。
日本では指定難病296で、小児慢性特定疾病の対象です。
新生児期から乳児期早期に発症することが多く、発生頻度はおよそ7,000〜10,000出生に1人とされています。
胆道閉鎖症の原因は、現在も完全には解明されていません。生まれつき胆道が作られなかった病気や、胎児期から出生後早期にかけて、胆管に炎症が起こり閉塞していく病気などが混在していると考えられています。
免疫反応、ウイルス感染、遺伝的ななりやすさなどとの関連が研究されていますが、どれか一つだけで説明できるわけではありません。保護者の育て方や妊娠中の行動が原因と決められる病気ではありません。
多くは家族に同じ病気の方がいない状態で発症します。遺伝について不安がある場合も、まずは主治医に相談し、必要に応じて専門的な説明を受けるとよいでしょう。
胆道閉鎖症で特に大切な手がかりは、黄疸、便の色、尿の色です。
ただし、これらの症状だけで診断はできないため、気になる場合は早めに医療機関で確認します。
| 症状 | 家庭で気づくポイント |
|---|---|
| 黄疸 | 皮膚や白目が黄色く見える状態です。生後2週間を過ぎてもやや緑がかった暗い色の黄疸が続く場合は相談の目安です。 |
| 白色便・淡色便 | 便が白っぽい色、アイボリー調の淡い色に見えることがあります。母子健康手帳の便色カードと比べて確認します。 |
| 濃い尿 | 尿が濃い黄色から茶色っぽく見えることがあります。胆汁の成分が尿に出ることと関係します。 |
| お腹の張り | 肝臓が腫れることで、お腹が張って見えたり、診察で肝臓が大きいと指摘されたりすることがあります。 |
| 哺乳不良・体重増加不良 | 飲む量が少ない、体重が増えにくい場合は、全身状態や栄養状態の確認が必要です。 |
新生児の黄疸には、生理的黄疸や母乳性黄疸など、胆道閉鎖症以外の原因もあります。一方で、胆道閉鎖症では黄疸は、やや緑がかった暗い色調で長く続き、便の色が淡くなっていきます。
便の色は早期発見の重要な手がかりです。母子健康手帳には、胆道閉鎖症の早期発見のための便色カードが綴じ込まれています。日中の明るい場所で便とカードを見比べ、1〜3番に近い色、または白っぽい・アイボリー調の淡い色の便が続く場合は、便のついたおむつや写真を持って小児科か小児外科に相談してください。
ただし、便色カードだけで正常・異常を完全に判断することはできません。黄疸、尿の色、哺乳、体重増加、元気さをあわせて見ることが大切です。
▼便色カード

診断では、黄疸や便色の経過、診察、血液検査、画像検査などを組み合わせます。
最終的な診断には、胆道の状態を詳しく確認する専門的な検査が必要になることがあります。
| 検査 | 確認すること |
|---|---|
| 血液検査 | 総ビリルビン・直接ビリルビン、AST・ALT、γ-GTPなどを調べ、黄疸の種類や肝臓・胆道系の状態を確認します。 |
| 腹部超音波検査 | 肝臓、胆嚢、胆道の形や、胆道閉鎖症を疑う所見がないかを確認します。 |
| 肝胆道シンチグラフィ | 胆汁が肝臓から腸へ排出されているかを調べる検査です。 |
| 肝生検 | 肝臓の組織を調べ、胆汁うっ滞や肝臓の障害の程度を確認することがあります。 |
| 胆道造影 | 手術時などに胆道へ造影剤を入れ、胆道の閉塞の有無を確認します。 |

治療の中心は外科手術です。代表的な手術は葛西手術で、正式には肝門部空腸吻合術と呼ばれます。閉塞した胆管組織を取り除き、肝臓の出口部分に腸をつなげて、胆汁が腸へ流れる道を作ることを目的とします。
葛西手術は、黄疸の改善と、自分の肝臓でできるだけ長く生活することを目指す治療です。
ただし、手術をすれば必ず完全に治るという意味ではありません。手術後も胆汁の流れ、肝臓の状態、胆管炎などを長く確認します。
葛西手術後は、黄疸が改善する場合もあれば、黄疸が続く、または再び強くなる場合もあります。経過には個人差があり、定期的な血液検査や画像検査で肝臓の状態を確認します。
注意したい合併症には、胆管炎、肝線維化・肝硬変、門脈圧亢進症、食道・胃静脈瘤、腹水、栄養障害などがあります。胆管炎は、術後に発熱、黄疸の悪化、便色の変化、食欲低下などで気づかれることがあります。
肝臓の働きが十分に保てない場合や、黄疸が改善しない場合、胆管炎を繰り返す場合、門脈圧亢進症などで生活への影響が大きい場合には、肝移植を検討することがあります。すべての患者さんに肝移植が必要になるわけではありませんが、長期的に専門医と相談しながら判断します。
胆道閉鎖症では、胆汁の流れが悪いことで脂肪や脂溶性ビタミンの吸収に影響が出ることがあります。栄養管理の目的は、制限することではなく、成長に必要なエネルギーと栄養を確保することです。
医師の指示により、ビタミン補充、栄養補助、薬物治療を行うことがあります。薬は胆汁の流れを助ける、胆管炎を予防・治療する、肝臓の状態を管理するなど、目的に応じて使われます。自己判断で中止せず、主治医に確認してください。
家庭では、黄疸、便の色、尿の色、発熱、食欲、嘔吐、お腹の張り、体重・身長の変化を見ます。
保育園や学校では、通院、服薬、体調不良時の連絡、食事や運動の配慮を共有しておくと安心です。体調が安定していれば、年齢や状態に応じて日常生活や集団生活を送ることができます。
胆道閉鎖症は早期発見・早期治療が重要な病気です。
黄疸や便色の変化が気になる場合は、様子を見すぎず小児科か小児外科に相談してください。
| 状況 | 対応の目安 |
|---|---|
| やや緑がかった暗い色の黄疸が生後2週間以降も続く | 小児科で黄疸の種類や肝臓の状態を確認します。 |
| 便が白っぽい・アイボリー調の淡い色に見える | 便色カードと比べ、便や写真を持って早めに相談します。 |
| 尿が濃い、体重が増えにくい | 胆汁うっ滞や栄養状態を確認するため受診を検討します。 |
| 発熱、黄疸悪化、強い腹痛、嘔吐 | 特に葛西手術後は胆管炎などの可能性もあるため、早めに医療機関へ連絡します。 |
| ぐったりしている、出血、意識の変化 | 通常の外来を待たず、救急相談・救急受診を検討します。 |
最初の相談先は小児科のことが多いです。
胆道閉鎖症が疑われる場合は、小児外科のある医療機関で詳しい評価と治療を行います。
すでに診断されている場合は、主治医から伝えられている再受診の基準も確認しておきましょう。
胆道閉鎖症では、小児慢性特定疾病医療費助成制度や、指定難病医療費助成制度の対象となる場合があります。
医療費助成の対象は、年齢、病状、重症度、所得、自治体の判断などによって異なります。
身体障害者手帳、特別児童扶養手当、障害児福祉サービス、自治体独自の医療費助成や相談支援を利用できる場合もあります。
制度は申請が必要なものが多いため、病院の医療ソーシャルワーカー、自治体窓口、保健師に相談しましょう。
胆道閉鎖症の将来は、手術時期、胆汁の流れ、肝臓の状態、胆管炎などの合併症、肝移植の有無によって異なります。葛西手術後に黄疸が改善し、長く自分の肝臓で生活する方もいます。一方で、成長後に肝臓の状態が変化し、追加治療や肝移植が必要になる場合もあります。
大切なのは、症状が落ち着いている時期も定期的に経過を確認することです。進学、就職、成人診療科への移行、妊娠・出産を考える時期には、これまでの治療歴や検査結果を整理し、専門医と相談しながら準備します。
A. 胆道閉鎖症は、肝臓から腸へ胆汁を運ぶ胆道がふさがり、胆汁が流れにくくなる乳児期の病気です。
黄疸、白っぽい便、濃い尿などが手がかりになります。早期に専門的な診断と治療につながることが重要です。
A. 黄疸が続く原因は、胆道閉鎖症だけではありません。生理的黄疸や母乳性黄疸などもあります。
ただし、生後2週間以降もやや緑がかった暗い色の黄疸が続く、便の色が白っぽくアイボリー調で淡い、尿が濃い場合は、直接ビリルビンを含めた検査で確認することが大切です。
A. 便色カードの1〜3番に近い色、または白っぽくアイボリー調で淡い色の便が続く場合は、早めに小児科や小児外科に相談しましょう。
可能であれば便のついたおむつや写真を持参すると、医師が状態を確認しやすくなります。
A. 葛西手術は、閉塞した胆管組織を取り除き、肝臓の出口部分に腸をつなげて胆汁の流れ道を作る手術です。
黄疸の改善と自己肝での生活を目指しますが、手術後も胆管炎や肝臓の状態を継続して確認します。
A. 必ず不要になるとはいえません。
手術後に黄疸が改善し、長く自己肝で生活できる場合もありますが、黄疸が続く、胆管炎を繰り返す、肝臓の働きが低下する場合などには肝移植を検討することがあります。
A. 経過が安定していれば、保育園・幼稚園・学校生活を送ることができます。
ただし、通院、服薬、感染症への注意、栄養管理が必要になることがあります。
体育や行事への参加は、主治医の指示と体調に合わせて調整しましょう。
胆道閉鎖症は、赤ちゃんの胆汁の通り道がふさがり、黄疸、白っぽい便、濃い尿などがみられる病気です。
黄疸や便色の変化だけで診断はできませんが、早く医療機関につながることが治療方針を決めるうえで重要です。
診断では、血液検査、腹部超音波検査、肝胆道シンチグラフィ、胆道造影などを、目的に応じて組み合わせます。
治療の中心は葛西手術で、胆汁を腸へ流す道を作ることを目指します。
手術後も、胆管炎、肝臓の状態、栄養、成長を長期的に確認します。肝移植が必要になる場合もあります。
便の色、黄疸、尿の色、発熱、食欲、体重の増え方など、家庭での気づきは診察の大切な情報になります。
気になる変化がある場合は、無理に自己判断せず、まず小児科か小児外科に相談してください。
監修医:国立研究開発法人 国立成育医療センター 総合診療部 統括部長 窪田満 先生